素粒子 強い力 弱い力
「物理学には重力,電磁力の他に"強い力"と"弱い力"があるんだよ!」と言われる.
重力や電磁力は身近なもので,難しそうな名前からすんなりと納得できるのですが,弱い力と強い力はその名前からまるで子供向けの本に出てくるような表現に思われがちです.しかし実際に弱い力と強い力は正式名称なのです.しかしこれらの力はマクロな物体,すなわち日常生活で扱うような目で見える物体を取り扱うときにはさほど影響を及ぼすものではなく,素粒子のようにとても小さい,ミクロな物体に影響を及ぼすのです.
素粒子って何?
素粒子とは内部構造のない粒子のことです.素粒子と聞くとどんなものが思い浮かぶでしょうか?電子?陽子?一般には素粒子をハドロン,レプトン,フォトンの3つにグループを分けることができます.
- ハドロン ハドロンはバリオンとメソンに分けられます.それぞれ重粒子や中間子と言ったりします.また強い力に関わります.
- レプトン ハドロンが強い相互作用をするのに対してレプトンは強い相互作用をしないものを指します.
- フォトン 電磁相互作用を媒介する粒子です.おそらく光子という名前のほうが馴染み深いかもしれません.また弱ボソンという光子に似た働きを持つものもこの括りに入ります.
標準模型をざっくりと
標準模型においてハドロンは6種類のクオーク,u (up),d (down),s (strange),c (charm),t (top),b (bottom),とその反粒子が結合してできています.それぞれ,uとd,sとc,tとbがペアになります.たとえば重粒子は3個のクオークが結合してできていて,陽子ではp(u,u,d),中性子ではn(u,d,d)となります.これらのクォークをくっつけるものをグルーオンといいます.糊ですね.
さてこれ以上素粒子の話を詳しくやるとフェルミ粒子やボース粒子,スピンなど量子力学の内容に入り込んでいくためここでお話を止めましょう.
力の伝わり方
さてお話を弱い力と強い力に戻しましょう.強い力はハドロンに関わる力,標準模型で考えるとクォークとグルーオンの間に働く力ですね.一方弱い力というものはβ崩壊のもとになる力です.β崩壊とは中性子が陽子に変わるとき,電子とニュートリノを放出する現象です.
このような説明ではwikiのほうがわかりやすいですね!もう少しわかりやすいように力が伝わるということをこのように考えてみましょう.まず力のやり取りをキャッチボールのように考えます.そしてボールが力を媒介する粒子とします.こう考えると強い力も弱い力も粒子のやり取りによって行われると考えられますね.このため弱い力や強い力は,弱い相互作用や強い相互作用とも言われます.これらを踏まえた上で力を考えてみましょう.この力を媒介する粒子を中間子といい,中間子の吸収,放出は頻繁に行われます.一方弱い力は弱ボソンが媒介となる粒子であり,β崩壊自体起きにくい現象であるためこれを起こす相互作用が弱い力であることがわかります.
最後になぜ粒子のやり取りで力が媒介できるの?と思う読者もいらっしゃるでしょう.ここでは詳しく説明はしませんが,空間に生じる変化に対して"場"という考え方が必要になります.より詳しく勉強したいのであればそのような言葉から始めると良いでしょう.
エーテル(物理学)
エーテルという言葉はどこかで聞いたことがあるでしょうか.
エーテルと聞くとどこかノスタルジックな感じがしますよね.私だけでしょうか.このエーテルについての議論はあの特殊相対性理論のきっかけともなりました.今回はそんなエーテルについて少し解説をさせていただきます.(つまりエチルエーテルの話ではありませんよ.)
エーテルと波と光
世の中には波がたくさんあります.例えば海に行くと波にゆられている船を見ることができますし,声を出すと耳の鼓膜が震えて音を認識することができます.このように波はなにかしらの"モノ"を介して伝わる事がわかります.
では同じように波である光も"モノ"を伝わって来ると考えられます.ここで太陽の光を考えてみましょう.太陽は宇宙空間にあり,太陽光が伝わるためには宇宙空間にもエーテルという物質が満ちていてそれが光を伝えていると考えたのです.(ただエーテルという考え方は光が電磁波であるという考えよりも昔に存在していたもので,デカルトは惑星の回転に対してエーテルの渦運動によって接触的に考えたりしていました.)
しかしエーテルの存在はマイケルソン・モーリーの実験を皮切りに存在が否定されてしまいます.
もう少し詳しく
マイケルソン・モーリーの実験とはどのような実験でしょうか.この実験は地球が静止したエーテルに対してどのように運動しているかを調べる実験です.ここで数式を出さないで説明するように努力してみます.
まず宇宙空間における光速を扱うとき,エーテルに対して運動している観測者が,静止している観測者とは異なる光速を測定すると考えられます.例えば電車に乗っているとき進行方向にボールを投げると電車内の観測者と,電車の外で止まっている観測者とでは速度が異なりますよね.
しかし地球の運動が光速に及ぼす影響は小さいためエーテルの存在を示すためには精度の高い実験をする必要があります.そこで用いられたものがマイケルソンの干渉計です.この干渉計は,光が到達するまでに必要な所要時間の差が干渉縞となって現れ,これによって非常に高い精度の測定を可能にします.近年においては重力波がこのような干渉計によって発見されました.実験装置等は下記の動画を参照してください.
さて,この実験はどのような結果となったかというと,この時間の差は観測されませんでした.すなわち,光の速度は変わりませんでした.つまりエーテルの存在は否定されたのです.もちろんこの結果は色々と修正を試みる人たちが頑張りましたが,結局この事実が覆ることはありませんでした.そしてローレンツによってエーテルの有無にかかわらず議論が成立することを示し,エーテルは姿を消したのです.
余談ですが,エーテル関連の実験にはマイケルソン・モーリーの実験のほかにトラウント・ノーブルの実験がありますが,こちらは日本語の記事が見つかりませんでした.英語ではTrouton–Noble experimentと書きます.私の読み方が間違っているのでしょうか?ちなみにこの実験は吊るされたコンデンサーがエーテルによって生じるねじれの力を検出するもので,当然失敗に終わりました.
あとこれはマイケルソン・モーリーの実験のわかりやすい動画です.
シュレディンガーの猫
シュレディンガーの猫ってご存知ですか?
昔から様々なところで”シュレディンガーの猫”という言葉を目にします.そのためたくさんの人が間違った意味で使い,たくさんの人がソレについて訂正を行ってきました.そのため”もう知ってるよ!”と言いたくなるかもしれませんが,練習も兼ねて書かせていただきます.ぜひ読んでみてくださいね.
まずシュレディンガーの猫とはどういうものでしょうか?
シュレディンガーの猫とは量子力学についての議論の一つです.
こういう思考実験を考えてみましょう.箱の中に完全に"ランダム"な要因によって死が引き起こされるからくりと一緒に猫を入れてみる.その後箱を開けるとその途端に生死が決定される.このとき大切なことは,箱が開けられるまで猫は生きている状態と死んでいる状態が"重ね合わせ"の状態になっているということです.(死にかけの猫が入っているわけではない.)
さてここでよく間違いだと言われるポイントは,"猫の状態が生きているか死んでいるか箱を開けなければわからない"というように不確定であることを述べる例にこの言葉を用いることです.
本当はシュレディンガー本人はこの"重ね合わせ"がおかしいぞ!と否定するためにシュレディンガーの猫を作りました.そもそもシュレディンガー自身は量子力学に否定的なのです.
しかし実際は"重ね合わせ"の状態が正しかったのです.もっとも猫のように大きなものではなく,電子などの小さなものにおいてですが.
それではこの"重ね合わせ"について少し考えてみましょう.
決定論という言葉は直感的にわかると思います.小中高で理科や物理で扱った質点や剛体を扱う力学は結果がピタッと定まりますね.(たとえば摩擦のない斜面で箱を滑らせるといった問題で位置や速度を決めることはできますよね!)このようなものを決定論といいます.
一方量子力学では決定論的ではありません.観測によって状態は定まります.上に述べたように状態が確率的に"重ね合わせ"で存在し,それらが観測によって1つの状態に収束するのです.この解釈はコペンハーゲン解釈といいます.これだけ聞くとわけがわからないですよね.私もよくわかりません.というより誰もわかりません.
観測の理論については面白いのですが非常に難しいのでここでは割愛させてくださいね.(一応ワードをあげておくならシュテルン-ゲルラッハの実験,分裂宇宙モデル)
これは2重スリットで最もわかりやすい動画です.